<参考>
*1)文部科学省・日本学術振興会(2019)「用語解説」『APパンフレット』166ページ〜169ページ
*2)文部科学省ホームページ(http://www.mext.go.jp/)
*3)中央教育審議会(2018)、『2040 年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)』
*4)独立行政法人大学改革支援・学位授与機構(2016)、『高等教育に関する質保証関係用語集(第4版)』
一人ひとりの学生に対して、履修計画や学修の仕方について助言するなど学修面の指導助言を行うこと。
(関連ワード)アカデミック・アドバイザー
教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。
【出典】
「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」平成24年8月28日中央教育審議会答申 用語集
( http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm)
Enrollment Management(EM)。学生を入学前から卒業後まで一貫して支援する取組。
大学設置基準上、大学での学びは「学修」としている。これは、大学での学びの本質は、講義、演習、実験、実習、実技等の授業時間とともに、授業のための事前の準備、事後の展開などの主体的な学びに要する時間を内在した「単位制」により形成されていることによる。
【出典】
「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」平成24年8月28日中央教育審議会答申 2ページ脚注
( http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm)
学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を培う教育。
新しい時代にふさわしい高等学校教育と大学教育を、それぞれの目標の下に改革し、子供たちがそれぞれの段階で必要な力を確実に身に付け、次の段階へ進むことができるようにするためのものである。
高等学校においては、小・中学校に比べ知識伝達型の授業に留まる傾向があり、学力の三要素(※)を踏まえた指導が浸透していないことが課題として挙げられる。ここには、一般入試において、一斉かつ画一的な条件で実施される試験で、その結果の点数で選抜する評価から転換し切れていない等、現行の多くの大学入学者選抜における学力評価が、学力の三要素に対応したものとなっていないことが大きく影響していると考えられる。また、高校生の進路や教育課程・授業内容の多様化により、高等学校教育として生徒に共通に身に付ける学力が確保されていないことも大きな課題となっている。
大学教育については、我が国の大学生の学修時間は米国と比べて依然として短く、授業の形態についても、一方的な知識の伝達・注入のみに留まるものが多く見受けられる。さらに、大学教育の場が、多様な学生が切磋琢磨する環境となっておらず、また、自分が将来社会で活動することと大学で受ける教育がどのように関係しているのか、明確でないことが多い。その結果、主体性を磨くことなく、自ら目標を持ってそれを実現していく力を身に付けないまま、社会に出る学生も多い。
また、大学入学者選抜については、前述のように、知識の記憶力などの測定しやすい一部の能力や、選抜の一時点で有している能力の評価に留まっていたり、丁寧な評価よりも学生確保が優先されるなど、高等学校教育で培ってきた力や、これからの大学教育で学ぶために必要な力を評価するものとなっていない。
そうした現状を、高等学校教育、大学教育を通じて育むべき「生きる力」「確かな学力」についての考え方を踏まえつつ、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の改革による新しい仕組みによって克服し、少年少女一人ひとりが、高等学校教育を通じて様々な夢や目標を芽吹かせ、その実現に向けて努力した積み重ねを、大学入学者選抜においてしっかりと受け止めて評価し、大学教育や社会生活を通じて花開かせるようにする必要がある。
なお、「高大接続」とは、高校生の全てを大学教育に接続するということではない。高大接続を議論する際には、高等学校卒業生の多様な進路を踏まえ、国家及び社会の責任ある形成者として、自立して生きる力を高等学校教育において確実に育むという視点が重要である。
また、「高大接続」の改革は、「大学入試」のみの改革ではない。その目標は、「大学入試」の改革を一部に含むものではあるが、高等学校教育と大学教育において、十分な知識・技能、十分な思考力・判断力・表現力、及び主体性を持って多様な人々と協働する力の育成を最大限に行う場と方法の実現をもたらすことにある。
さらに、「高大接続」改革は、知識・技能の習得を無視する改革ではないという点も重要である。「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性・多様性・協働性」のすべてを十分に向上させることを目指すものであり、改革によって高校生、大学生が身に付けられるようになる力は、十分な水準の知識・技能はもちろんのこと、自分で目標を持って他者と協力しながら新しいことを成し遂げていく力までも含むものである。
【出典】
「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」平成26年12月22日中央教育審議会答申 4ページ~9ページ
( http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1354191.htm)
※学力の三要素:
(1)基礎的・基本的な知識・技能
(2)知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等
(3)主体的に学習に取り組む態度 (学習指導要領「生きる力」より)
学生が授業科目の履修を決める際の参考資料や準備学習を進めるために用いられる各授業科目の詳細な授業計画。一般に、授業科目名、担当教員名、講義目的、毎回の授業内容、成績評価方法・基準、準備学習のための具体的な指示、教科書・参考文献、履修条件などが記載されている。また、教員相互の授業内容の調整や、学生による授業評価などにも使われる。
職員全員を対象とした、管理運営や教育・研究支援までを含めた資質向上のための組織的な取組。
大学が地方公共団体や企業等と協働して、学生にとって魅力ある就職先の創出をするとともに、その地域が求める人材を養成するために必要な教育カリキュラムの改革を断行する大学の取組を支援することで、地方創生の中心となる「ひと」の地方への集積を目的とする事業。
ブレンディッド型学習の一種。学生はeラーニング等を活用した自習により知識を習得し、教室ではその獲得した知識の定着と活用に主眼を置いた講義を行う。アクティブ・ラーニングに資する取組として期待される。
(関連ワード)ブレンディッド型学習、フリップド・ラーニング
評価対象について専門的・技術的な共通の知識を有する同業者・同僚によって行われる評価や審査。一般に、高度な専門的知見に基づき評価対象の質を適切に評価することが必要な場合に用いられる。
PBLという略語は、Problem-Based Learning「問題基盤型学習」とProject-Based Learning「プロジェクト型学習」を指す場合がある。どちらも構成主義的な学習観に基づいた活動であり、その学習デザインには共通点もあるが、相違点もある (湯浅・大島・大島 2010)。以下では,主にProblem-Based Learningに焦点を当てて解説する。
Problem-Based
Learning(以下,PBL)は,教員が提示するシナリオや事例を糸口に、学習課題を学生自らが見出し、その学習課題に対して学生自身が学習計画を立て、学びながら、問題解決を図っていく教授法のことを言う(小林・鈴木編2018)。シナリオや事例といった具体的な問題が与えられ、その問題を解決するために「自分が」何を知る必要があるのかを見つけることが学生の課題となる。研究プロジェクト、ケースメソッド、問題処理の状況や臨床の現場で遭遇した問題など、PBLは多様な形態・定義を有するが、その多くは、学習に問題を用い、問題の特性、問題の本質を理解するために必要となる情報の範囲、これを最善の方法で取り組んだりやり遂げたりする方法について確認するために学習者同士のディスカッションがあるという点で共通している(※1)。
ドナルドR.ウッズ(2001)は「PBLにとって重要なのは問題状況を利用して、知る必要がある学習活動を導くことに焦点を当てるということである」とし、PBLにおける8つの課題について以下のようにまとめている。
(ドナルド R. ウッズ著,新道幸恵訳(2001)p.14より引用)
また、三重大学は実際に展開されているPBL教育がこれらのタイプに限定されるものではなく、複数のタイプの性格を併せ持っている場合もあるとしつつ、多様な形態を有するPBLについて以下の4つのタイプに整理している。
学習の契機になる問題との出会いを教員が提示することによって学習が展開していく。ただし、学習課題の設定や学習の遂行は学生の自己決定による。多人数あるいは少人数での授業、事例シナリオを活用した授業などの形態がある。
学習の契機になる問題も学習課題もすべて学生自身が設定することによって学習が展開していく。共通教育授業、専門指向型授業のどちらでも可能である。またグループ全体で問題を探求したり、あるいは個人毎に探求する形態もある。
学内外の要請や課題設定に基づいて、ある企画の遂行・達成をめざして問題解決的な学習を行う。つまり問題解決及び課題達成の志向性が強い。企画や課題の内容や遂行方法によって、イベントなどの課題実践遂行タイプ、制作やものづくりを課題とするタイプ、問題解決のための提案をしていくタイプなどがある。
様々な場での実地体験を通して、問題との出会い、問題・課題の発見、問題解決を進める学習。ただし何よりも体験することに重きを置いているため、問題解決の成果をもとめるよりも、実地での体験を重視する。主眼とする学習内容によって、学習課題の発見を重視するタイプ、専門的な基礎技能を習得するタイプ、実際の問題解決過程に参加するタイプなどがある。
(※1)Boud, David and Grahame Feletti. The Challenge of Problem-Based Learning. 2nd ed., Kogan Page, 1997, 344p.
【出典】
ドナルド R.ウッズ著,新道幸恵訳(2001)「第2章 問題にもとづいた学習(PBL)とは」『PBL Problem-based Learning:判断能力を高める主体的学習』pp.13-17,医学書院 中井俊樹シリーズ編集・小林忠資・鈴木玲子編(2018)『〈看護教育実践シリーズ〉4 アクティブラーニングの活用』pp.113-124,医学書院
山田康彦(2011)「2.PBL教育の概要とPBLの主な授業タイプ」『三重大学版 Problem-based Learningの手引き―多様なPBL授業の展開―』pp.4-7,三重大学高等教育創造開発センター
(http://www.dhier.mie-u.ac.jp/item/Mie-U_PBLmanual2011.pdf)(2019.4.2現在)
湯浅且敏・大島純・大島律子(2010)「PBLデザインの特徴とその効果の検討」『静岡大学情報学研究』 16, 15-22.
教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称。具体的な例としては、教員相互の授業参観の実施、授業方法についての研究会の開催、新任教員のための研修会の開催等を挙げることができる。なお、大学設置基準等においては、こうした意味でのFD
の実施を各大学に求めているが、単に授業内容・方法の改善のための研修に限らず、広く教育の改善、更には研究活動、社会貢献、管理運営に関わる教員団の職能開発の活動全般を指すものとしてFD の語を用いる場合もある。
(関連ワード)ファカルティ・ディベロッパー、FDer
LMS(Learning Management System:学習管理システム)。e ラーニングの運用を管理するためのシステムのこと。学習者の登録や教材の配布、学習の履歴や成績及び進捗状況の管理、統計分析、学習者との連絡等の機能がある。
教育プログラムや授業科目、学生等を対象とした、基準に照らした質的・量的測定のこと。近年では、学生の学修成果の測定が重要な要素となっている。測定手法の例としては、定期試験などの直接評価と、卒業生への状況調査や学生に対する満足度調査などの間接評価が挙げられる。また、その機能により、診断的評価(学修前の予備知識、スキルの評価)、形成的評価(学修過程の学力向上や理解度の評価)、総括的評価(学修後の目標達成状況の評価)などに分類できる。
(関連ワード)直接評価、間接評価
学修到達度調査のことで、学修成果の測定・把握の手段の一つ。ペーパーテスト等により学生の知識・能力等を測定する方法の総称で、標準化テストとも呼ばれる。
中央教育審議会「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて(答申)」(2012 年)においては、教育プログラムの成果をプログラム共通の考え方や尺度(「アセスメント・ポリシー」)に則って評価し、その結果をプログラムの改善・進化につなげるという改革サイクルが回る構造を定着させることが必要、とされている。
学生の行動や満足度に関するアンケートを基本とした調査。複数大学の学生を対象に共通の質問項目で調査を実施することにより、学部間・大学間の状況比較や、学年進行に伴う変化の把握、学内の他のデータ(成績等)と組み合わせて各種の分析に役立てるために開発されたものである。米国で広範に導入されているN S S E 、C I R P
等がこれに当たる。米国ではフルタイム・パートタイムの別、幅広な年齢層、4,600以上の高等教育機関それぞれの目的・性格の違い等を考慮し、「学生の行動にどのような変容を及ぼしたか」という観点での行動調査が行われるようになった。
【出典】
「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」平成24年8月28日中央教育審議会答申 用語集
( http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm)
学生が、授業科目、プログラム、教育課程などにおける所定の学習期間終了時に獲得し得る知識、技術、態度などの成果。
(関連ワード)学習成果、ラーニング・アウトカム
3つのポリシーに基づく大学教育の質向上に向けたPDCAサイクルを適切に機能させるためには、学生の学修成果に関する情報を的確に把握・測定し(すなわち可視化し)、当該情報を、各大学が取り組むべき目標の設定、目標と現状とのギャップの測定、目標の到達に向けた既存のカリキュラムや教育手法の見直し等に適切に活用することが必要である。このようなサイクルが機能することは、内部質保証を確保する上での中核的な課題である。
また、大学の質保証の強化という観点に加え、大学の教育成果に期待し、大学の教育研究と連携を深めつつある地域社会・企業等に対して大学の説明責任を確保・向上するために、大学全体の教育成果の可視化の取組を促進するための方策についてもあわせて議論する必要がある。
学修成果の可視化を図る前提として、
・例えば、学生が身に付けた資質・能力が大学の定めるディプロマ・ポリシーに記載する内容にどれだけ近づいたか等を検証できるように、3つのポリシーはできる限り具体的なものであること。
・カリキュラム・ポリシーに基づいた具体的な教育課程の編成・実施が実際に行われるとともに、厳格な成績評価が行われること
・学修時間の測定やルーブリック、学修ポートフォリオ等の教育成果の可視化に資する手法を、予め効果的に組み込むこと
などが必要なのではないか。
その上で、学修成果の可視化の測定に用いることができる可能性のある情報の例は、以下のようなものが考えられるのではないか。
学生個人の学修成果の測定に用いることができる可能性のある情報の例 | 大学全体の成果の測定に用いることができる可能性のある情報の例 |
---|---|
― | 入学志願者の数・倍率 |
学修時間 | 学修時間の状況(平均や傾向等) |
単位の取得状況(成績・ルーブリックによる評価を含む) | ― |
GPA | ― |
アセスメントテストの結果 | アセスメントテストの結果 |
学位の取得状況 | ― |
― | 退学率、卒業率、留年率 |
資格や褒賞等の取得状況 | 特定の資格の取得率、褒賞の取得件数 |
学外試験のスコア | 外部試験のスコアの状況 |
進路の決定状況 | 進路決定率(就職率、進学率) |
学内外からの評判 | 学内外からの評判 |
― | 学生による成長実感・大学教育への満足度 |
【出典】
「情報公開及び学修成果の可視化に関する取組について」平成29年8月9日制度・教育改革ワーキンググループ(第2回)配付資料 4~5ページ
( http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/043/siryo/1393770.htm)
中央教育審議会「学士課程教育の構築に向けて(答申)」(2008 年)において提言された学士課程共通の学習成果に関する参考指針。学士課程修了者が身に付けていることを期待される能力として定義され、4分野13 項目から構成されている。
【出典】
「学士課程教育の構築に向けて」平成20年12月24日中央教育審議会答申
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1217067.htm)
学士課程教育を各教員の属人的な取組から大学が組織的に提供する体系立ったものへと進化させ、学生の能力をどう伸ばすかという学生本位の視点に立った学士課程教育へと質的な転換を図るためには、教員中心の授業科目の編成から学位プログラム中心の授業科目の編成への転換が必要である。そのためには、教学システムの再構築やそれを支援するスタッフの養成や確保が必要となる。
このような全学的な教学マネジメントの確立のためには、学長のリーダーシップによる全学的な合意形成が不可欠であり、それを可能とする実効性ある全学的なガバナンスと財政基盤の確立が求められる。教員にはそれぞれの授業において学生の知的・人間的能力を開花させる質の高い教育を展開する責任がある。学生がその潜在的能力を眠らせたまま大学を卒業してしまうことは、当該学生にとっても、社会にとっても大きな損失であり、学長や教学担当副学長等の全学的な教学マネジメントに当たる者は、潜在的能力を含めて学生の能力を開花させる学士課程教育を大学が組織的に提供する責任があることを改めて認識する必要がある。
【出典】
「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」平成24年8月28日中央教育審議会答申 15ページ
( http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm)
単なる知識や技能だけでなく、様々な心理的・社会的なリソースを活用して、特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に対応することができる力。 (関連ワード)コンピテンス
Grade Point Average。学生の成績評価の客観性及び厳格性の確保が求められているが、GPA はその客観性を確保するために大学に導入されている。一般に、授業科目ごとに5段階で成績評価を行い、それぞれ4から0のグレード・ポイント(GP)を付し、この単位当たりの平均を出し、その一定水準を卒業などの要件とする制度が見られる。
(関連ワード)GP(Grade Point)
英語のknowledge-based societyに相当する語。論者によって定義付けは異なるが、一般的に、知識が社会・経済の発展を駆動する基本的な要素となる社会を指す。類義語として、知識社会、知識重視社会、知識主導型社会等がある。
【出典】
「我が国の高等教育の将来像」平成17年1月28日中央教育審議会答申 用語集
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05013101.htm)
コース・ナンバリング。授業科目に適切な番号を付し分類することで、学修の段階や順序等を表し、教育課程の体系性を明示する仕組み。学内における授業科目の分類、複数大学間での授業科目の共通分類という二つの意味を持つ。
知識やスキルを使いこなす(活用・応用・統合する)ことを求めるような評価方法。論文やレポート、制作物といった完成作品(プロダクト)や、スピーチやプレゼンテーション、協同での問題解決、実験の実施といった実演(狭義のパフォーマンス)を評価する。
中央教育審議会「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて(答申)」(2012 年)においては、予測困難なこれからの時代に高等教育が貢献するために、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力を育成する大学教育への質的転換が必要であるとされている。
(関連ワード)ジェネリック・スキル
「仕事に就くこと」に焦点を当て、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度のことを、「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」の4つの能力に整理し、これらを「基礎的・汎用的能力」と示している。
学生のこれらの能力を測定・可視化するためのツールを「汎用的能力測定テスト」として、各教育機関における独自の指標の開発や、PROG(社会人基礎力の測定)等の指標を活用した、教育内容の改善に取組んでいる。
汎用的能力測定テストは、各教育機関においてPROGなどの指標のほか、「企業が求める基礎学力到達テスト」、「人間力セルフチェック」、「実践活動力の測定」、「学士力・就業力の測定」など、各校独自の形式でも実施されている。テストの結果は、学生へのフィードバックや大学等の教育改善の手がかりとして活用されている。
【出典】
「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」平成23年1月31日中央教育審議会答申 16ページ以降
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1301877.htm)
大学教育再生加速プログラム テーマⅡ(学修成果の可視化)ホームページ掲載「実績報告書」等
(http://www.ap-theme2.jp/)
学生が身に付けることが期待される知識・技能・態度と授業科目との間の対応関係や学修の道筋を示した図の総称。学生と教職員がカリキュラム全体の構造を俯瞰できるようにすることで、体系的な履修を促す意図を持つ。カリキュラム・マップ、カリキュラム・チャートとも呼ばれる。
(関連ワード)カリキュラム・ツリー、カリキュラム・マップ、カリキュラム・チェックリスト、カリキュラム・チャート
リベラル・アーツの起源は、古代ローマにおける自由(liberal)市民に必要な学芸(arts)としての言語と数学系の諸科にある。中世のヨーロッパ大学において、文法・修辞・論理の言語系3学(trivium)と算術・幾何・天文・音楽の数学系4学(quadrivium)の7自由学芸として哲学(学芸)部に定着し、特定の職業からの拘束を受ける神・法・医の専門職学部の諸学芸に対して自由な学芸とされ、また一方でそれらの教育のための基礎学芸と位置づけられた。近代のリベラル・アーツはアメリカの大学で確立した概念で、自由人に相応しい、特定の職業のためではない、一般的な知力を開発する学芸を意味し、言語・数学系の諸科と人文科学、社会科学、自然科学の諸学芸を指す。一部に、近代科学とその生み出す技術(science and technology)の知を別種のものとみて、それらを除いた諸科をリベラル・アーツとみる向きもある。なお、リベラル・アーツは教養と訳されるが、教養の英訳がカルチャーつまり文化一般であるのに対して、リベラル・アーツはディシプリン(方法)を持った諸科目であり、リベラルアーツ・カレッジにおいても、一般教育に加えリベラル・アーツ分野の専攻の学習が課されるのが通常である。(中央教育審議会「学士課程教育の構築に向けて(答申)」(2008 年)より)
米国で開発された学修評価の基準の作成方法であり、評価水準である「尺度」と、尺度を満たした場合の「特徴の記述」で構成される。記述により達成水準等が明確化されることにより、他の手段では困難な、パフォーマンス等の定性的な評価に向くとされ、評価者・被評価者の認識の共有、複数の評価者による評価の標準化等のメリットがある。コースや授業科目、課題(レポート)などの単位で設定することができる。
国内においても、個別の授業科目における成績評価等で活用されているが、それに留まらず組織や機関のパフォーマンスを評価する手段とすることもでき、米国AAC&U(Association of American Colleges & Universities)では複数機関間で共通に活用することが可能な指標の開発が進められている。
【出典】
「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」平成24年8月28日中央教育審議会答申 用語集
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm)
Institutional Researchの略
教育、経営、財務情報を含む大学内部のさまざまなデータの入手や分析と管理、戦略計画の策定、大学の教育プログラムのレビューと点検など包括的な内容を意味する。
(出典:大学基準協会 『2017(平成29)年度「大学評価」結果報告書』用語集)
IRに係る部署や機関を設立する大学では、以下のように示している場合もある。
IR(Institutional Research)とは、
①教育研究・経営・財務情報など大学の諸活動に関する情報収集・蓄積
②特に学生の学習成果など教育機能についての調査分析
③大学経営の基礎となる情報の分析
を行い、またそれらの分析結果の提供を通じて、大学の自己評価、意思決定に寄与する活動である。
(出典:東洋大学IR室WEBサイト http://www.toyo.ac.jp/ja-JP/about/ir/about/)(2019.4.2現在)
学生が、学修過程ならびに各種の学修成果(例えば、学修目標・学修計画表とチェックシート、課題達成のために収集した資料や遂行状況、レポート、成績単位取得表など)
を長期にわたって収集し、記録したもの。それらを必要に応じて系統的に選択し、学修過程を含めて到達度を評価し、次に取り組むべき課題をみつけてステップアップを図るという、学生自身の自己省察を可能とすることにより、自律的な学修をより深化させることを目的とする。従来の到達度評価では測定できない個人能力の質的評価を行うことが意図されているとともに、教員や大学が、組織としての教育の成果を評価する場合にも利用される。
【出典】
「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」平成24年8月28日中央教育審議会答申 用語集
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm)
他者の考えを認識しつつ自分の考えについて前提条件やその適用範囲などを振り返るとともに、他者の考えと比較、分類、関連付けなどを行うことで、多様な観点からその妥当性や信頼性を吟味し、考えを深めること。
(関連ワード)クリティカル・コミュニケーション
我が国は、グローバル化や情報化の進展、少子高齢化等の社会の急激な変化に直面しており、個人にとっても社会にとっても将来の予測が困難な時代を迎えつつあるといえる。このような時代背景の下で、予測困難な次代を切り拓く人材育成や学術研究の発展等、社会の各方面・各分野において大学改革に対する期待は高まっている。知の創造と蓄積を担う自律的な存在である大学は、新しい知識やアイディアに基づいた新しい時代の見通しと大学の役割を描き、次代を切り拓く人材の育成や学術研究の推進により、未来を形づくり、社会をリードすることが求められている。
かつて我が国が工業社会として成長していた時代とは異なり、これからの我が国の目指すべき社会像は、優れた知識やアイディアの積極的活用によって発展するとともに、人が人を支える安定的な成長を持続的に果たす成熟社会である。そしてそのような成熟社会において求められるのが、
・答えのない問題に解を見出していくための批判的、合理的な思考力等の認知的能力
・チームワークやリーダーシップを発揮して社会的責任を担う、倫理的、社会的能力
・総合的かつ持続的な学修経験に基づく創造力と構想力
・想定外の困難に際して的確な判断ができるための基盤となる教養、知識、経験
等、予測困難な時代において高等教育段階で培うことが求められる「学士力」である。
この「学士力」をはぐくむためには、従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が一緒に切磋琢磨し、学生が主体的に問題を発見し解を見出していく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である。すなわち、ディスカッションやディベートといった双方向の授業やインターンシップ等の教室外学修プログラムによる主体的な学修を促す学士課程教育の質的転換が求められる。学生は、主体的な学修を重ねてこそ、生涯学び続け、主体的に考える力を修得するのであり、そのためには質を伴った学修時間が必要である。
その一方で、我が国の学生の学修時間は諸外国に比べて短く、国民、産業界、学生は、学士課程教育の現状に満足していない。さらに、学長・学部長についても、学生の汎用的能力や授業外学修時間について否定的にとらえている。
そのため、学士課程教育の質的転換への方策としては、
①質的転換の好循環を作り出す始点としての学修時間の増加・確保が、「教育課程の体系化」「組織的な教育の実施」「授業計画の充実」「全学的な教学マネジメントの転換」といった諸方策と連なって進められること
②教員中心の授業科目の編成から、学位プログラムとしての組織的・体系的な教育課程への転換を行うことが必要である。
【出典】
「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」平成24年8月28日中央教育審議会答申 1~15ページ
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm)
単位は、講義、演習、実験などによる授業科目ごとに学生に授与されるもので、1単位の授業科目は、標準的に15 時間の授業と30 時間の準備学習や復習の時間を合わせて45 時間の学修を要する教育内容をもって構成される。組織的な履修指導や履修科目登録数の上限設定などにより学生の主体的な学修を促し、1単位あたり45 時間の学修を確保するための取組を単位の実質化という。
学生生活上で支援を必要とする学生に対し、仲間である学生同士で気軽に相談に応じ、手助けを行うこと。
(関連ワード)ピア・チューター
大学教育の質保証の文脈においては、その対象とするところをマクロレベル(機関)、メゾ(ミドル)レベル(学部・学科・プログラム)、ミクロレベル(授業科目)と構造化して検討することが一般的となっている。
アカデミック・ライティング。学術的な文章を書く技術のことで、学生支援の一環でレポートや論文の執筆技術を指導、サポートする機能を備える大学が増えてきている。
(関連ワード)アカデミック・ライティング
我が国では、一般的に大学教育の先取り履修を単位認定する取組を指す。米国では、カレッジボードにより「AP プログラム(Advanced Placement Program)」が、ハイスクールで大学レベルの教育を提供する教育プログラムとして提供されている。
今日の変化の激しく、先行き不透明な社会において、これからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性であると考えられる。たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることは言うまでもない。こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を[生きる力]と称することとし、これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であると考えられる。
[生きる力]は、全人的な力であり、幅広く様々な観点から敷衍することができる。
まず、[生きる力]は、これからの変化の激しい社会において、いかなる場面でも他人と協調しつつ自律的に社会生活を送っていくために必要となる、人間としての実践的な力である。それは、紙の上だけの知識でなく、生きていくための「知恵」とも言うべきものであり、我々の文化や社会についての知識を基礎にしつつ、社会生活において実際に生かされるものでなければならない。
[生きる力]は、単に過去の知識を記憶しているということではなく、初めて遭遇するような場面でも、自分で課題を見つけ、自ら考え、自ら問題を解決していく資質や能力である。これからの情報化の進展に伴ってますます必要になる、あふれる情報の中から、自分に本当に必要な情報を選択し、主体的に自らの考えを築き上げていく力などは、この[生きる力]の重要な要素である。
また、[生きる力]は、理性的な判断力や合理的な精神だけでなく、美しいものや自然に感動する心といった柔らかな感性を含むものである。さらに、よい行いに感銘し、間違った行いを憎むといった正義感や公正さを重んじる心、生命を大切にし、人権を尊重する心などの基本的な倫理観や、他人を思いやる心や優しさ、相手の立場になって考えたり、共感することのできる温かい心、ボランティアなど社会貢献の精神も、[生きる力]を形作る大切な柱である。
そして、健康や体力は、こうした資質や能力などを支える基盤として不可欠である。
【出典】
「21 世紀を展望した我が国の教育の在り方について」平成8年7月19日中央教育審議会答申
( http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/old_chukyo/old_chukyo_index/toushin/1309579.htm)
国際バカロレア機構( 本部ジュネーブ) が提供する国際的な教育プログラム。国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)。国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保することを目的として設置。国際バカロレア資格を有する者で18 歳に達した者に対しては、我が国の大学への入学資格が認められる。
(関連ワード)IB、国際バカロレア
高等学校等において、グローバル・リーダー育成に資する教育を通して、生徒の社会課題に対する関心と深い教養、コミュニケーション能力、問題解決力等の国際的素養を身に付け、将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図る事業。
将来の国際的な科学技術関係人材を育成するため、先進的な理数教育を実施する高等学校等を指定し、学習指導要領によらないカリキュラムの開発・実践や課題研究の推進、観察・実験等を通じた体験的・問題解決的な学習等を支援する事業。
学力の三要素(※)を、社会で自立して活動していくために必要な力という観点から捉え直したものであり、
(ⅰ)これからの時代に社会で生きていくために必要な、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」、(ⅱ)その基盤となる「知識・技能を活用して、自ら課題を発見しその解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」、(ⅲ)さらにその基礎となる「知識・技能」から構成される。
大学においては、それを更に発展・向上させるとともに、これらを総合した学力を鍛錬することが求められる。
【出典】
「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」平成26年12月22日中央教育審議会答申 6ページ
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1354191.htm)
※学力の三要素:
(1)基礎的・基本的な知識・技能
(2)知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等
(3)主体的に学習に取り組む態度
(学習指導要領「生きる力」より)
大学入学者選抜の改革を進めるに当たっては、「大学入試センター試験」の抜本的改革が必要であるが、それは全体の改革の一部にすぎない。何よりも重要なことは、個別選抜を、画一的な一斉試験で正答に関する知識の再生を問う評価に偏ったものとしたり、入学者の数の確保のための手段に陥らせたりすることなく、「人が人を選ぶ」個別選抜を確立していくことである。
「人が人を選ぶ」個別選抜の確立とは、高等学校教育で身に付けた「生きる力」「確かな学力」をいかに大学教育で発展・向上させ、社会へと送り出していくかという観点から、大学の入り口段階で求められる力を多面的・総合的に評価するという、個別選抜本来の役割が果たせるものにすることである。
また、そうした評価に転換するためには、大学入学者選抜を含むあらゆる評価において、画一的な一斉試験で正答に関する知識の再生を問い、その結果の点数だけを評価対象とすることが公平であると捉える、既存の「公平性」についての社会的意識を変革し、それぞれの学びを支援する観点から、多様な背景を持つ一人ひとりが積み上げてきた多様な力を、多様な方法で「公正」に評価するという理念に基づく新たな評価を確立していくことが不可欠である。その際、画一的な一斉試験による大学入学者選抜だけを取り上げて「公平性」を論ずるのではなく、一人ひとりの人間の生涯を通して見た時に、多様な背景を持った学習者一人ひとりの能力が最大限に磨かれるように教育の機会が均等に与えられるという意味での「公正性」を確立していくべきであり、その一部として大学入学者選抜における「公正性」を理解すべきと考えられる。
(アドミッション・ポリシーに基づく個別選抜の確立)
各大学は、求める学生像のみならず、各大学の入学者選抜の設計図として必要な事項をアドミッション・ポリシーにおいて明確化することが必要であり、高等学校及び大学において育成すべき「生きる力」「確かな学力」の本質を踏まえつつ、入学者に求める能力は何か、また、それをどのような基準・方法によって評価するのかを、アドミッション・ポリシーにおいて明確に示すことが求められる。
(多元的な評価に向けた意識改革と、新たな評価手法の蓄積・共有)
個別選抜における評価に当たっては、画一的な一斉試験で正答に関する知識の再生を問い、その結果の点数のみに依拠した選抜を行う従来型の「公平性」「客観性」と、多数の受験生に対して短時間で合否判定を行うための効率性を重視するあまり、面接、集団討論、小論文、調査書、その他による多元的な評価を重視しない傾向がある。この点に関しては、客観性とは何かについての意識改革と併せて、個別選抜を行う側が、自らの都合のみにより選抜する方法ではなく、一人ひとりの入学希望者が行ってきた多様な努力を受け止めつつ、入学者に求められる能力を「公正」に評価し選抜する方法へと意識を転換し、アドミッション・ポリシーに示した基準・方法に基づく多元的な評価の妥当性・信頼性を高め、説明責任を果たしていく必要がある。
【出典】
「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」平成26年12月22日中央教育審議会答申 11~14ページ
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1354191.htm)
学生が在学中に、企業等において自らの専攻や将来希望する職業に関連した就業体験を行うこと。
【出典】
「我が国の高等教育の将来像」平成17年1月28日中央教育審議会答申 用語解説
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05013101.htm)
基礎的・汎用的能力は、分野や職種にかかわらず、社会的・職業的自立に向けて必要な基礎となる能力であると考えられる。具体的内容については、「仕事に就くこと」に焦点を当て、実際の行動として現れるという観点から、「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」の4つの能力に整理される。
<人間関係形成・社会形成能力>
○「人間関係形成・社会形成能力」は、多様な他者の考えや立場を理解し、相手の意見を聴いて自分の考えを正確に伝えることができるとともに、自分の置かれている状況を受け止め、役割を果たしつつ他者と協力・協働して社会に参画し、今後の社会を積極的に形成することができる力である。
○この能力は、社会とのかかわりの中で生活し仕事をしていく上で、基礎となる能力である。特に、価値の多様化が進む現代社会においては、性別、年齢、個性、価値観等の多様な人材が活躍しており、様々な他者を認めつつ協働していく力が必要である。また、変化の激しい今日においては、既存の社会に参画し、適応しつつ、必要であれば自ら新たな社会を創造・構築していくことが必要である。さらに、人や社会とのかかわりは、自分に必要な知識や技能、能力、態度を気付かせてくれるものでもあり、自らを育成する上でも影響を与えるものである。具体的な要素としては、例えば、他者の個性を理解する力、他者に働きかける力、コミュニケーション・スキル、チームワーク、リーダーシップ等が挙げられる。
<自己理解・自己管理能力>
○「自己理解・自己管理能力」は、自分が「できること」「意義を感じること」「したいこと」について、社会との相互関係を保ちつつ、今後の自分自身の可能性を含めた肯定的な理解に基づき主体的に行動すると同時に、自らの思考や感情を律し、かつ、今後の成長のために進んで学ぼうとする力である。
○この能力は、子どもや若者の自信や自己肯定観の低さが指摘される中、「やればできる」と考えて行動できる力である。また、変化の激しい社会にあって多様な他者との協力や協働が求められている中では、自らの思考や感情を律する力や自らを研さんする力がますます重要である。これらは、キャリア形成や人間関係形成における基盤となるものであり、とりわけ自己理解能力は、生涯にわたり多様なキャリアを形成する過程で常に深めていく必要がある。具体的な要素としては、例えば、自己の役割の理解、前向きに考える力、自己の動機付け、忍耐力、ストレスマネジメント、主体的行動等が挙げられる。
<課題対応能力>
○「課題対応能力」は、仕事をする上での様々な課題を発見・分析し、適切な計画を立ててその課題を処理し、解決することができる力である。
○この能力は、自らが行うべきことに意欲的に取り組む上で必要なものである。また、知識基盤社会の到来やグローバル化等を踏まえ、従来の考え方や方法にとらわれずに物事を前に進めていくために必要な力である。さらに、社会の情報化に伴い、情報及び情報手段を主体的に選択し活用する力を身に付けることも重要である。具体的な要素としては、情報の理解・選択・処理等、本質の理解、原因の追究、課題発見、計画立案、実行力、評価・改善等が挙げられる。
<キャリアプランニング能力>
○「キャリアプランニング能力」は、「働くこと」の意義を理解し、自らが果たすべき様々な立場や役割との関連を踏まえて「働くこと」を位置付け、多様な生き方に関する様々な情報を適切に取捨選択・活用しながら、自ら主体的に判断してキャリアを形成していく力である。
○この能力は、社会人・職業人として生活していくために生涯にわたって必要となる能力である。具体的な要素としては、例えば、学ぶこと・働くことの意義や役割の理解、多様性の理解、将来設計、選択、行動と改善等が挙げられる。
これらの能力は、包括的な能力概念であり、必要な要素をできる限り分かりやすく提示するという観点でまとめたものである。この4つの能力は、それぞれが独立したものではなく、相互に関連・依存した関係にある。このため、特に順序があるものではなく、また、これらの能力をすべての者が同じ程度あるいは均一に身に付けることを求めるものではない。
これらの能力をどのようなまとまりで、どの程度身に付けさせるのかは、学校や地域の特色、専攻分野の特性や子ども・若者の発達の段階によって異なると考えられる。 各学校においては、この4つの能力を参考にしつつ、それぞれの課題を踏まえて具体の能力を設定し、工夫された教育を通じて達成することが望まれる。
【出典】
「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」平成23年1月31日中央教育審議会 24~26ページ
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1301877.htm)
入学前の他、在学中、就職前など多様な時期に、一定期間、留学やインターンシップ等の体験活動を行う仕組み。
【出典】
「平成27 年度大学教育再生戦略推進費「大学教育再生加速プログラム(AP)」公募要領~テーマⅣ 長期学外学修プログラム(ギャップイヤー)~」平成27年3月文部科学省 1ページ
(http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/03/20/1356108_1.pdf)
例えば数ヶ月間~数年次にわたり大学等での授業と企業等での実践的な就業体験を繰り返す教育プログラム。
「奉仕(サービス)」と「学習(ラーニング)」を結びつけた教育的取組を指す。一定の期間、社会奉仕活動を通して、それまでの学修を実際の活動に活かし、また、その体験から自分の学問的取組や進路について新たな視野を得ることをねらいとする。
「社会人基礎力」とは、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されており、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省により、2006年に提唱された。
「人生100年時代」や「第四次産業革命」の下で、2006年に発表した「社会人基礎力」はむしろその重要性を増しており、有効であるが、「人生100年時代」ならではの切り口・視点が必要となっていた。
こうした状況を踏まえ、平成29年度に開催した「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」において、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力が「人生100年時代の社会人基礎力」と新たに定義された。社会人基礎力の3つの能力/12の能力要素を内容としつつ、能力を発揮するにあたって、自己を認識してリフレクション(振り返り)しながら、目的、学び、統合のバランスを図ることが、自らキャリアを切りひらいていく上で必要と位置づけられている。
【出典】
「社会人基礎力」経済産業省HP
(http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.html)(2019.2.22現在)
課題発見・探求能力、実行力等の「社会人基礎力」や「基礎的汎用的能力」などの社会人として必要な能力を有する人材を育成するため、ギャップイヤー等を活用し、「何のために学ぶのか」という学びの動機付けに資するよう開発され、学生が主体的に学ぶことができるよう体制も整備された、1か月以上の長期の学外での学修プログラムのこと。
【出典】
「平成27 年度大学教育再生戦略推進費「大学教育再生加速プログラム(AP)」公募要領~テーマⅣ 長期学外学修プログラム(ギャップイヤー)~」平成27年3月文部科学省 1ページ
(http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/03/20/1356108_1.pdf)
我が国の大学の多くは2学期制(セメスター制)であるが、平成25 年度から導入可能となった4学期制あるいはそれに準じた教育課程編成は、大学の国際化や多様な学修体験の機会の確保の観点から、2学期制に比べると、次のようなメリットがあると考えられ、現在、いくつかの大学で導入され、今後導入を予定している大学もある。
① 学期の区切りや長期休業期間を海外の大学に合わせることができるため、留学などの学生・教員の国際交流が促進される
② 週に複数回授業すること、より集中した学習が可能となり、教育効果が高まる
③ 2か月程度の短期休学が可能となり、社会体験活動へ参加しやすくなる
【出典】
「学事暦の多様化とギャップイヤーを活用した学外学修プログラムの推進に向けて」(意見のまとめ)平成26年5月29日学事暦の多様化とギャップタームに関する検討会議 4ページ
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/57/toushin/1348334.htm)
高等教育機関が、大学設置基準等の法令に明記された最低基準としての要件や認証評価等で設定される評価基準に対する適合性の確保に加え、自らが意図する成果の達成や関係者のニーズといった様々な質を確保すること。
(関連ワード)内部質保証
大学等の教育改革の取組の中から、優れた取組(Good Practice)を選び、支援するとともに、その取組を広く社会に情報提供を行うことにより、他の大学等が選ばれた取組を参考にしながら教育改革に取り組むことを促進し、我が国全体の大学教育改革を進める事業。
卒業時における質保証の強化のための大学教育のプロセス全体に係る取組には、以下のようなものがある。
1)3つのポリシーに基づく教育活動の実施
○ ディプロマ・ポリシーにおいて学生が身に付けるべき資質・能力を明確化し,それを踏まえた体系的で組織的な教育を実施すること。《ディプロマ・ポリシーと体系的・組織的な教育の一体性・整合性》
○ 学生が身に付けるべき資質・能力と社会との関係を明確にし,学生のキャリア形成等に資するための取組を実施すること。《出口を見据えた学修成果の目標設定と取組》
2)卒業段階でどれだけの力を身に付けたのかを客観的に評価する仕組みの構築
○ 学生の学修成果を客観的に評価するための基準や方針を定め,全教職員で認識を共有し,適切に運用すること。また,学生の学修成果の評価を踏まえた教職員の組織的な教育活動の改善を実施すること。《学修成果の評価指針と教育改善》
○ 各授業科目の成績評価基準を明確化し,全教員が共有することにより,厳正な進級・卒業認定を実施すること。《成績評価の明確化と厳正な進級・卒業認定》
3)学生の学修成果をより目に見える形で社会に提示するための手法の開発
○ 卒業時の学修成果の客観的提示方法を開発すること。《学修成果の客観的提示》
4)学外の多様な人材との協働による助言・評価の仕組みの構築
○ 大学教育の質保証に資するための,高等学校や産業界等外部関係者を含めた学外の多様な人材との協働による助言・評価の仕組みとしての助言評価委員会等を設置すること。《外部評価体制の構築》
○ 卒業後の進路先において学修成果がどのように生かされ,どのように評価されているかを把握・分析するとともに,その後の大学教育の改善への活用手法を開発すること。《卒業生調査の実施と大学教育の改善》
【出典】
「平成28 年度大学教育再生戦略推進費大学教育再生加速プログラム(AP)「高大接続改革推進事業」公募要領-テーマⅤ 卒業時における質保証の取組の強化-」平成28年3月文部科学省 3ページ
(http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/03/29/1369002_1.pdf)
学位証書補足資料。学生が取得した学位・資格の内容について示した欧州地域における統一的な様式による説明書。主に学位・資格の基本情報や、プログラム内容と学習成果に関する情報などが盛り込まれる。我が国においては、大学教育再生加速プログラム(AP)採択校を中心に、企業等の採用時に、学生の学修成果がより積極的に評価されるような学修履歴証明に資するものとして、総括的成績評価を記述する日本版の「ディプロマ・サプリメント」の構築の取組が進みつつある。
(関連ワード)プレ・ディプロマ・サプリメント
「入学者受入れ方針(アドミッション・ポリシー)」は、各大学・学部等が、その教育理念や特色等を踏まえ、どのような教育活動を行い、また、どのような能力や適性等を有する学生を求めているのかなどの考え方をまとめたものであり、入学者の選抜方法や入試問題の出題内容等にはこの方針が反映されている。また、この方針は受験者が自らにふさわしい大学を主体的に選択する際の参考ともなる。アメリカでは、高等学校の成績の点数、高等学校で履修しておくべき科目・内容、標準的な試験の点数等を具体的に示すことが一般的である。
入学者受入れの方針に加えて、将来像答申が新たに提唱したのが、「教育の実施や卒業認定・学位授与に関する基本的な方針(ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー)」である。将来像答申は、組織的な取組の強化が大きな課題となっている我が国の大学の現状を踏まえ、各機関の個性・特色の根幹をなすものとして、三つの方針の重要性を指摘するとともに、「早急に取り組むべき重点施策」の中で、三つの方針の明確化を支援する必要性を強調している。
さらに、学士課程答申では、学士課程教育の改革の実行に当たり、各大学が、教学経営において、「学位授与の方針」、「教育課程編成・実施の方針」、及び「入学者受入れの方針」の三つの方針を明確に示すことが最も重要であるとし、将来像答申で言及した「ディプロマ・ポリシー」、「カリキュラム・ポリシー」、「アドミッション・ポリシー」のそれぞれに対応するとした。また、これらの方針において、大学の個性・特色は具体的に反映されるものであるとしている。
【出典】
「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」平成24年8月28日中央教育審議会答申 用語集
( http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm)
CEFR(Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment:外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠)。語学シラバスやカリキュラムの手引きの作成、学習指導教材の編集、外国語運用能力の評価のために、透明性が高く、分かりやすい、包括的な基盤を提供するものとして、20 年以上にわたる研究を経て、2001 年に欧州評議会が発表した、外国語の学習者の習得状況を示す際に用いられる枠組み。
多様な学生が入学する昨今、大学教育を行う上で求められる一定の学力水準を担保するために行う補習授業等の取組。