立正大学 双方向授業と課題解決型フィールドワークによるアクティブ・ラーニング
テーマⅠ「アクティブ・ラーニング」
事業期間:2014年度~2019年度
【取組の概要】
立正大学では、フィールドワークを軸とした豊富な実験・実習を基幹科目とする「文理融合型」の地球環境科学部(地理学科・環境システム学科)をフロントランナーとして、新たな教育手法を導入し、大学全体にアクティブ・ラーニングを普及させる取組を推進している。専門科目の知識の定着を図りつつ、思考力やコミュニケーション能力、課題発見・課題解決能力などの汎用的能力を修得させるため、学生の能動的な学びを促すプログラムを実施している。それらはA:タブレットを用いた双方向授業、B:予習用動画の作成とそれを用いた反転授業、C:学生主体のフィールドワーク、D:リアル教材資料の活用、という4つのプロジェクトによって構成される。また、AP学生評価委員会を立ち上げ「学生とともに授業をつくる」教育改革を行っている。
【取組のポイント】
➢ A:タブレットを用いた双方向授業
➢ B:予習用動画の作成とそれを用いた反転授業
➢ C:学生主体のフィールドワーク
➢ D:リアル教材資料の活用
➢ 学生の主体的な研究活動を支援するAP学生研究プロジェクト
➢ 地方自治体と連携した学外での活動などの推進
【キーワード】
「双方向授業」、「反転授業」、「フィールドワーク」、「地域連携」、「リアル教材」、「アクティブ・ラーニング」、「タブレット」、「予習用動画」
【人材育成目標】
立正大学では、建学の精神にもとづいて、「教育ビジョン」を構築し、その実現に向けた取組を進めている。その「教育ビジョン」が‘「モラリスト×エキスパート」を育む。’である。これは、私たちが生きている/生かされているこの世界を、より良いものにしていく原動力となる人材育成に他ならない。
・自ら前向きに律することのできる人
・人の喜びや悲しみを想像し、共有する感受性を持った人
・大人としての基礎的な教養を身につけた人
こうした「モラル」という基盤に、一人ひとりが「これだ!」と追求したくなる専門分野を見つけ、掛け合わせ、深め、議論し、行動を起こす。このような‘「モラリスト×エキスパート」を育む。’というビジョンのもとで形成されるのは、社会問題や環境問題が深刻化する世の中で求められる人材であると考えている。
【教育上の課題】
少人数形式の初年次教育やセミナーなどは以前に比べて増加しているが、入学から卒業までの4年間で履修する単位の多くは、大教室で行われる多人数の講義科目で占められる。私立大学文系学部では、特にその傾向が強くみられ、1万人超の学生を抱える立正大学では、そうした授業で学生にどれだけ前向きな姿勢を生み出せるのかが課題だった。また、汎用的スキルの修得が卒業後も有用であることについては、教員の意識が必ずしも高くはなく、教員の意識改革や教授法の研修なども課題となっていた。
【これまでの取組、実績・成果】
<取組>
既存のカリキュラム体系における専門科目を中心として、講義・実験実習科目において次の4つの教授法を導入してきた。
A:タブレットを用いた双方向授業
B:予習用動画の作成とそれを用いた反転授業
C:学生主体のフィールドワーク
D:リアル教材資料の活用
<実績・成果>
A:タブレットを使って学生の解答をスクリーンへ投影し、そこに示される解答や意見を参照しながら双方向授業を行っている。教員と学生の間に生じるギャップを埋め、担当教員が自分で授業を振り返ることができる。そのほか、学生間で多様な意見や考え方があることを知り、他者から多くの刺激を受けられる。
B:復習中心だった授業外学修を予習に充てることで、実際の指導内容を変化させるいわゆる反転授業を実施している。学生は事前にインターネット上で配信される動画で学習する。授業時間中は、より高度で発展的な内容を学習するほか、実践的な課題を解決するためにグループディスカッションを行う場合もある。
C:従来のフィールドワークの授業設計や内容は各教員の裁量に委ねられてきた。たとえば、調査計画の立案から報告書の作成までを学生主体で実施する授業においても、その具体的な方法は多様である。あらためてフィールドワークにおけるアクティブ・ラーニングの意義と方法について、改善を図っている。
D:様々な授業科目でICTの活用が進む一方、それらが実感に乏しいという欠点を補うために、リアル(実物)教材を併用している。異文化理解や自然環境の違いを学ぶための標本などを利用し、学生の知的好奇心を引き出すことができる。
■AP学生研究プロジェクト・地域連携事業
また、授業科目以外では、学生の主体的な研究活動を支援するAP学生研究プロジェクト、さまざまな地方自治体と連携した学外での活動などを積極的に推進している。
■高校へのリアル教材貸出し・出張授業
2014年度に近隣高等学校へのリアル教材のニーズを調査し、それに基づいて本学の授業で購入し活用しているリアル教材の貸し出しを行っている。高大接続を視野に入れて授業設計などに関する情報交換も行っている。
■研修会・公開授業など実施と振り返り
4つのプロジェクトの実践事例を公開してピアレビューするほか、講師を招いて研修会などを随時行ってきた。
取組事例:アクティブ・ラーニング普及冊子の作成
アクティブ・ラーニングを導入している地球環境科学部教員が中心となり、大学教職員向けにアクティブ・ラーニングの16手法の内容と授業事例を紹介する冊子を作成している。
【今後の取組の計画】
■ファカルティ・ディベロッパー(FDer)の育成。
2018年度よりファカルティ・ディベロッパー(FDer)を育成する体制整備に着手。
その他、以下の4点について、重点的に取り組む。
■取組の継続と、他大学・中学高校に対する教育手法の普及。
■在学生や卒業生へのアンケート・学力調査による効果検証。
■ステークホルダーに対する意識を高めた大学ガバナンスの強化。
■地域連携や高大接続事業などを通じた、社会貢献活動の推進。
【本取組における成果と社会へのインパクト】
●近隣高校へのリアル教材貸出しを通じたアクティブ・ラーニングの普及。
●アクティブ・ラーニングの手法を取り入れたAO入試の推進。
2017年度にこの内容について公開シンポジウムを開催。
●公開シンポジウムや各種研究会の開催によるアクティブ・ラーニングの深化。
●「アクティブ・ラーニング・オンライン:ALO」・「Find!アクティブ・ラーニング」・本学ホームページ・APニュースレター等で学外へ向けて情報を発信。
●大学・社会人教育懇談会の実施。
インターンシップ受入れ企業などを中心に、懇談の場を設け、今後の大学と社会のあり方について意見交換の場を設定。
【本取組の質を保証する仕組み】
●AP外部評価委員会
5名のAP外部評価委員を委嘱し、本取組に対して評価を受ける。
●AP学生評価委員会
アクティブ・ラーニング科目を受講した学生による授業評価を行い、学生とともに授業を改善する仕組みを整備。
●学内ピアレビュー
教職員が相互に授業に参加し授業構成や指導法について検討。
●各種アンケートなどによるアクティブ・ラーニングの効果測定
1) 全学アクティブ・ラーニング実態調査・意識調査
全教員を対象とした全学的なアクティブ・ラーニングに関する実態調査と、アクティブ・ラーニングに対しての意識調査を実施。
2) 全国アクティブ・ラーニング調査
いくつかのアクティブ・ラーニングを導入した科目において、プレ・ポストアンケート調査を実施し、その効果を測定した。
3) 科目ごとに実施する授業改善アンケート
全学部学生を対象として授業改善アンケートを科目ごとに実施。アクティブ・ラーニング導入科目では別途質問項目を設け、教授法の振り返りやアクティブラーナーとしての程度を測定。
4) 地球環境科学部フィールドワークアンケート
基幹科目であるフィールドワーク実習科目において、担当教員を対象とした、実施内容やアクティブ・ラーニングに関する取組内容や進展状況を調査。
具体的な実施計画における指標 |
2014年度
(起点)
|
2017年度
(実績)
|
2019年度
(目標)
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ALを導入した授業科目数の割合 |
16.5% |
33.3% |
50.4% |
AL科目のうち、必修科目数の割合 |
16.7% |
30.5% |
19.0% |
ALを受講する学生の割合 |
94.8% |
100.0% |
100.0% |
学生1人当たりAL科目受講数 |
7.8 |
13.5 |
55.0 |
ALを行う専任教員数 |
94.1% |
89.7% |
77.7% |
学生1人当たりのAL科目に関する授業外学修時間(1週間あたり) |
8.3 |
6.4 |
14 |
予習用動画を作成・公開する講義科目の割合 |
4.8% |
39.5% |
65.2% |
ファカルティーディベロッパー数 |
2 |
6 |
4 |
AL(講義系科目)を行う専任教員数 |
3 |
10 |
23 |
AL(実習系科目)を行う専任教員数 |
32 |
35 |
33 |
ALに関するFD受講者数 |
21 |
35 |
34 |
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